皆さんは、ご自身の加入している自動車の任意保険に、「弁護士費用特約」を付けていますか?
弁護士費用特約とは、被保険者が偶然の事故により受けた被害について弁護士に相談する場合の法律相談料や、被害回復を図るため、弁護士を頼んで損害賠償請求を行う場合の弁護士費用・裁判費用などについて、ご自身が加入している保険会社から一定額の保険金の支払いを受けることができる制度です。現在国内で販売されている自動車保険のほとんどについて特約として付けることができ、保険料は保険会社により異なりますが、1年間で1500円~2000円前後程度だそうです。
我々の業界においてこの特約に関わる事務を扱うのは、日弁連リーガルアクセスセンター(通称LAC)です。私もこのLACと弁護士特約の契約をしているので、この保険を使った交通事故の相談などを受けることがしばしばありますが、それなりに利用されているな、という感覚を持っています。案件の多くは比較的軽微な(といっても当事者にとっては大事ですが)物損事故です。
実はこの制度、多くの場合、保険を使うことができる方は、保険証券に被保険者として名前が記載されている本人(「記名被保険者」といいます。多くの場合、車検証の所有者あるいは使用者名義人)に限られません。
大抵の場合、対人対物賠償責任保険と同様に
⑴ 記名被保険者
⑵ 記名被保険者の配偶者
⑶ 記名被保険者またはその配偶者の同居の親族
⑷ 記名被保険者またはその配偶者の別居の未婚の子
が事故に遭ったときに、保険を使うことができます。さらには、
⑸ ⑴~⑷以外で被保険自動車を所有している人
⑹ ⑴~⑷以外の人であって、⑴~⑷の人が自ら運転する被保険自動車以外の自動車の正規の乗車装置またはその装置のある室内に搭乗中の人
などが運転して事故に遭った場合でも、保険を使うことができる場合があります。
私の感覚だと、弁護士費用特約を使って法律相談をされる方は、事故後、日頃付き合いのある保険代理店の方から制度の存在を聞いて申し込んだというケースが割と多いように思います。裏を返せば、それだけこの制度自体の認知度や、利用できる人の範囲についての認知度が低いため、利用が今ひとつ増えていないようにも思われます。
自動車保険などとは切り離された弁護士費用単体の保険もアメリカではよくあるそうで、この保険が普及していることが、訴訟大国の顔を作っている面もあるようです。医療保険について国民皆保険制度を取る日本では、医療機関の利用が比較的気軽なのと同じような感覚でしょうか。
財産的損害が少ない事案では、費用対効果から弁護士の利用を控える方が多いですが、この制度が広まれば弁護士が利用できる領域も広がるでしょう。日本でも弁護士費用単体の保険も遂に発売が開始されました。今後この保険の契約者や利用者が拡大していくのか、一弁護士として興味あるところです。
※ 本稿は、月刊大阪弁護士会2012年9月号の特集記事を参考にさせていただきました。
(弁護士費用保険)プリベント少額短期保険株式会社「MIKATA」http://preventsi.co.jp/