蓑健太郎 弁護士ブログ

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弁護士 蓑健太郎が
日々の出来事を書き綴っています。

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高齢者・障がい者権利擁護の集い

お隣石川県は金沢で開かれた「第10回 高齢者・障がい者権利擁護の集い」に参加してきました。主催は日弁連・中弁連・金沢弁護士会です。

弁護士会主催のイベントなのですが、パネルディスカッションには石川県内各地の地域包括支援センターの職員の方が参加され、金沢弁護士会の収集した石川県内の高齢者の実態調査(アンケート方式)について活発な意見が交わされました。

その中で興味深かったのは、地域によって調査結果にやや差がある点です。

たとえば、加賀温泉郷を抱える加賀市では、温泉で働くために遠方より転入した方が、年を取り認知能力が衰えてきても、近隣に身辺の世話をしてくれる身寄りがいないため、市長が成年後見を申し立てる制度が他市町村より多く利用されているそうです。大規模新興団地を抱える都市圏でもこれから増えそうな話です。

また、高齢者虐待の通報者については、津幡町では、社会福祉協議会などが積極的に啓発活動を行っているためか、本人や近隣住民、民生委員などの通報もまんべんなく通報しているのに対して、高齢化の進行している能登北部地域においては、介護専門職員からの通報が目立って多い傾向が見られるそうです。

それにしても、配布された資料中に、石川県の人口構成のグラフがあったのですが、能登北部は総人口73,842人中、65歳以上が29,321人で39.7%、全世帯数31,259世帯中、高齢者のみ世帯で14,150世帯で45.2%、高齢者単身世帯も5989世帯で19.1%だというから驚きです(総人口と65歳以上人口は石川県調査に基づく。世帯数はアンケート調査結果に基づく)。

近い将来、日本中がこのような高齢社会を迎えることになるのでしょうか。本当に深刻な問題です。

人権擁護大会

佐賀市で開かれた人権擁護大会に行ってきました。

これは、弁護士の人権意識の高揚を目的として毎年開催される、日弁連最大のイベントの一つで、今年で55回目になるそうです。東京を除く全国各地を持ち回りで行われ、佐賀は最後の土地ということです。

初日は3つの分科会に分かれ、一般市民も傍聴自由のシンポジウムが開かれました。テーマはそれぞれ、教育、自殺防止、沿岸域の環境保全(佐賀らしい…)です。私は第2分科会に参加しました。

資料を含めて400ページにもなる基調報告書で大きな割合を占めたのが、自殺の背後にある社会的要因という項目で、100ページ以上を占めていました。多重債務、依存症、過労、離婚、身体障害、性的マイノリティなど、人がだれしも抱える可能性のある様々な要因が複雑に絡み合って、人を自殺に向かわせるようになっているとのことで、性別、事業者・労働者の別、学生、居住地域などで、自殺者には一定の傾向を見てとれるそうです。特に地域特性については、千葉県浦安市では30代の自殺が3割、沖縄県うるま市では50代が5割、新潟県佐渡市では80代以上が4割、大阪市西成区では60代が3割と、地域によって自殺者の一番多い世代が違うことが大変興味深いデータだと思いました。自殺防止の取り組みは、このようなデータに基づいて対象を明確にして行っていく必要がありそうです。

また、滋賀県野洲市では、自治体と社会福祉協議会、不動産業者、司法書士、弁護士などが連携して、租税や家賃の滞納を契機に生活困窮者を見つけ出し、各業種が連絡を取り合って適切な機関につなぐ取り組みを行い、成果を上げているとのことで、このような取り組みは全国的に広めていく必要があると感じました。

 

弁護士任官の壁

昨日土曜日、弁護士任官推進中部ブロック大会に参加するため、名古屋に行ってきました。

弁護士任官とは、弁護士としての経験を積んだ人が裁判官や検察官になることを言います。

英米法系の国では、法曹一元制度が取られているため、弁護士などの経験者のなかから裁判官や検察官を選ぶシステムになっていますが、日本は原則として司法試験合格後、司法修習を終えた者の中から裁判官や検察官を選ぶキャリアシステムを採用しているので、弁護士任官は例外です。

もっとも、2001年に発表された政府の司法制度改革審議会最終意見書の中では、裁判官の給源の多様化、多元化を目指すべきとされており、最高裁と日弁連が一致協力し、恒常的な体制を整備して協議・連携を進めることにより、継続的に実効性のある措置を講じていくべきとされていました。

しかしながら、現実の弁護士任官への道は非常に厳しいようです。2001年から2010年までの10年間で任官した弁護士は51名しかおらず、近年は多くて5名程度に止まっています。弁護士任官が増えない理由としては、任官申込み後に行われる最高裁の採用過程において、最高裁の諮問機関である下級裁判所裁判官指名諮問委員会のなかで、候補者の約40%が不適任とされたり、任官申込みを取り下げたりしていることがまず挙げられるようです。その理由ははっきりしませんが、弁護士としての能力や裁判官としての資質の不足、具体的な任官意欲・動機付けの不足、裁判官としての職責に対する自覚の不足、組織人としての適正の欠如などがマイナス要素として評価の対象とされているようです。

一連の司法制度改革については、相当程度実現したと評価できるもの(裁判の迅速化、法曹人口の拡大、裁判員制度の施行)もありますが、まだまだ道半ばといったものも多くあります。弁護士任官については、後者の典型例と言えるでしょう。国民的な議論を呼ぶ問題でもないだけに、早々の改革は険しく、実現には最高裁と日弁連とのさらなる協議が求められます。

法律業務のIT化

最近、依頼を受けていた案件が終了したことで、事件ファイルを記録棚の隅に移したりすることが増えてきたのですが、ふと思ったことが。

うちの業界は、ペーパレス化が進んでいないなということ。

時代は電子化だ、クラウドだ、ユビキタスだ、などとマスコミは喧伝していますが、民事訴訟規則は書類の送達にファックスを認めていても、メールなどは認めていません。同じ法律でも、会社法は株主総会招集通知を電子メールで発送することも場合によっては可能としている(会社法299条3項など)ことなどに比べると、違いを感じます。

弁護士の中には、手書きの手帳ではなくてPDAやスマートフォンでスケジュール管理をしたり、事務所のメールを携帯電話に転送したりして、出先でも仕事をこなす方もおられますが(一般の会社では当たり前のことでしょうが)、私なんかはあまりその気にはなりません。というのも、事件記録は個人情報のかたまりですから紛失が怖いですし、裁判の書類は通常はA4版の紙に12ポイントの字、字数は37文字、行数は26文字という余裕のある構成で書かれているため、ちょっとの事件でもかなりかさばります。

かといって、オフィス複合機のソーターで全ての事件記録をスキャン、PDF化してタブレット端末で持ち運ぶことも考えられますが(端末には暗号をかけます)、厚みのある紙媒体では「この記録のこの辺の真ん中あたり」といった感覚で把握できていた重要箇所も、電子データでは全くわかりません。最近のソフトでは付箋を付ける機能もありますが、やはり100頁を超えるものとなると、使いづらいです。

そうなると、やっぱりいつもの紙に落ち着いてしまい、ずるずる来てしまった感があります。当面は紙から離れられないでしょうね。

ところで、私は先月からスマートフォンに機種変更したのですが、法令検索には便利です。というのも、自治体や社会福祉協議会主催の法律相談を担当するとき、今まで遭遇したことのない相談が持ち込まれて、関係法令を調査したくなったとき、インターネットに接続して色々な法令を検索することができるからです。総務省の法令データ提供システムは非常に多くの法令を調べることができます。それも無料です。

ただ、私が契約している判例検索システムを利用するには、スマートフォンの画面は小さすぎるので、モバイルPCがあればいいなとは思ってます(出先に持って行くのが億劫なので、あまり持ち運んでいませんが)。

 

夏期研修

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毎年恒例の中弁連夏期研修に行ってきました。会場は岐阜市の都ホテルです。

私は、今年は、中弁連の3つの委員会(刑事弁護委員会、中弁連シンポジウム実行委員会、弁護士任官推進委員会)の委員を割り当てられており、今回の夏期研修では刑弁とシンポ委員会も同じ会場で続けて開かれ、出席してきました。

 

夏期研修の方は、4名の講師の方が2日間にわたって、講義をされました。

・法人破産における管理・換価の実務的対応 / 石井 三一

・大震災における弁護士の役割 / 津久井 進

・インターネットにおける権利侵害からの救済 / 牧野 二郎

・取締役の責任追及を巡る会社訴訟実務 / 岩井 直幸

個人的に面白かったのは、3つ目のインターネット権利侵害の救済についての講演です。

掲示板サイトの運営者は、サーバやIPアドレスを第三者の管理会社に管理委託し、違法な書き込みがあった場合、できるだけ自分のところに直接的な責任追及がくるのを防いでいるとのことです。クレジットカード利用の際に、加盟店の問題取引を助長させているのではないかとも思える決済代行業者の存在と重なるところがあると感じます。

また、平成24年3月19日東京地裁決定で、googleのサジェスト機能の差止めを認めた事例が紹介されました。googleの検索エンジンに、たとえば「砺波市」と入力すると、その後に「砺波市美術館」などと自動的に検索語候補が表示されるあの機能です。特定の人物や会社名を検索すると、その人物や会社が犯罪やその他の違法行為を行っていることを連想させるようなサジェスチョンがなされるところから、問題になったようですが、東京地裁は、この機能の差止めを認める決定を出しました。もっとも、googleはこの決定に従っておらず、現在もこの機能は生きています。表現の自由の制約の問題も絡み、なかなか難しい問題だと思います。

 

東京スカイツリー

仕事の関係で東京に行ってきました。

昨日の午前中は時間に空きがあったので、事前予約もありませんでしたが、東京スカイツリーに登ってきました。

当日券を求めるべく、午前7時45分に並び始め、チケットを買って天望デッキ(350メートル)に登れたのが9時25分頃。

さらにそこから列に並び、天望回廊(450メートル)まで到達するのに40分かかりました。

ただエレベーターは本当に速い。地上から350メートル地点までわずか50秒です。どうなってるんでしょう。

お盆の真っ只中、家族連れで大変賑わっていました。意外と団体客は少なかったように思います。

肝心の眺めはというと、やや曇りがちで富士山こそ見えませんでしたが、遠くまで見渡すことができました。

建造物の上から眺めるというより、飛行機か山の上から見下ろすという感じです。

皆さんも東京に行かれた際は一度登ってみられると面白いと思います。

三県大会

北陸三県弁護士協議会定期大会(三県大会)が庄川のゆめつづりで開かれ、私も参加してきました。

協議事項や講演の演題が高齢社会における弁護士の役割についてのものであり、さまざまな報告や意見交換がなされていました。

財産管理や任意後見、成年後見などについては、近時は司法書士会が力を入れて取り組んできている一方で、弁護士会はあまり熱心にやってこなかったとの見方があることから、会を挙げて力を入れて行くことなども重要なようです。

また、介護や福祉の問題については、直接的に紛争が生じることが少ないことから、どうしても弁護士には手薄となりがちな分野のようです。介護・福祉の専門職の方々との連携を深めていく必要性なども議論されていました。

三県大会二日目には、倫理研修もありました。事件の相手方から同時に依頼をうけてはいけないなどといった、弁護士倫理の話です。私は今年は履修義務年度ではなありませんが、去年受講したときの内容の確認の意味もあり、受講してきました。実際の事件を重ねていくうちに、このような場合受任してよいのか、受任している場合は辞任すべきか、について迷うことがあります。明確な答えはないことが多いですが、他の弁護士の考え方を知ることができ、有意義な研修となりました。

弁護士知財ネット

もうちょっと前の話になるのですが(6月15日)、金沢で開かれた「弁護士知財ネット」の勉強会にお邪魔してきました(といいつつ、懇親会まで出席させてもらいました)。

知財といえば、小泉政権時代に「知財立国」ということで、世界2位の出願件数を誇る特許や、商標(ブランド、トレードマーク)、意匠(工業デザイン)、アニメやJPOPなどの著作権、イネなどの作物の品種(種苗)の保護と利用を進めることになり、最近ではよくニュースや新聞でも取り上げられています。

この知財ネットは、弁護士と弁理士が構成員となり、講師を招いて知財についての勉強をするのが主目的の組織のようです。私がこのような場に顔を出したのは、司法試験の選択科目で知財(科目は特許と著作権)を選択してロースクールで勉強しており、司法修習時代にも東京地裁知財専門部での修習をした経験があるので、知財に親近感を持っているからです。といっても、地方の弁護士は知財に積極的な方が少ないのが現実でしょう。

それはなぜか。個人的な考えですが、

1)知財の代表である特許は、機械、情報通信、化学などの理系知識が要求されるため、技術の理解ができない文系弁護士はついていけない(ついていこうとしない)

2)特許の侵害訴訟や審決取消訴訟は東京・大阪地裁の専属管轄(2審は知財高裁のみ)であるため、地方の弁護士は遠方に出張が必要的であること

3)知財事件審理は通常事件と違いが大きいこと(和解率が低い、書面はクリーンコピーが必須、技術説明会と称したプレゼンのような弁論準備手続がある、審理期間がスピーディー過ぎて大変)

となると、やはり専門特化した事務所か、総花的にメニューを提示できる大事務所が強みを見せる分野であり、どうしても東京や大阪の事務所が全国の事件を集中的に引き受けることになるのでしょう。また、知財に価値を見出すのは主に企業であって、費用対効果でも東京や大阪の事務所が処理するのに適した類型の案件であるとも言えますし。

勉強会の中で、アメリカの連邦巡回控訴審のように、高裁所在地を持ち回りで東京の裁判官が出張するようなことをすれば、地方の弁護士も知財事件をやりやすくなるといった話がありました。なるほどと思いましたが、そのためには裁判官の増員が必要でしょう。制度初めの頃は知財に対応する事務所もないということで、事件数が増えず、早晩廃止、ということになっては仕方ないですが。

書いているうちに、何が書きたいのかよく分からなくなってきたので、今日はここまで。

田園風景

このHPのトップページのFlashでも取り上げられていますが、散居村の風景を飾る色と言えば、緑。田んぼの色です。うちの事務所のカラ―は緑だ!と最初に決めて、事務椅子の色やボールペンの色、事件記録ファイルの色など、さまざまなところに緑色を揃えてみたのですが、その新緑の田園風景も、近時は徐々に変わってきているようです。

素人の私にはよく分かりませんが、麦でしょうか。氷見や小矢部ではハトムギの栽培に力を入れていると聞きますが、となみ野も同じなのでしょうか。緑の田んぼに混ざって黄金色の稲穂が輝く畑も多く見られるようになりました。北日本新聞の連載「千五百秋に」では様々な農業者の取り組みが紹介されていました。富山県は水田率が全国有数の県ですが、山間部に小規模な耕作地が点在する中国山地などとは違って、比較的平野部でまとまった農地が確保できるだけ、恵まれているようです。農業の6次産業化も言われていますが、農地が散居村の風景のお飾りだけではなく、私達の腹を満たす食料の生産基地として今後も機能していってもらいたいと思います。

クレサラ実務研究会

DSC00310-1全国クレジット・サラ金問題対策協議会主催による「第20回 クレサラ実務研究会in京都2012」に出席してきました。午前10時から午後17時まで、クレジット・サラ金問題の第一線で活躍されている弁護士・司法書士の方々の講演を聞き、非常に勉強になりました。今後の業務に生かしていきたいと思います。

・地方自治体による民間への業務委託等において、法令の基準より有利な労働条件を義務付ける公契約法、公契約条例制定の動きが全国に広まりつつあり、官製ワーキングプア問題の解消に一役買っているとのことでした。

・出会い系サイトがサクラを利用して消費者に利益が得られること等をもってサイトに誘導し、不正な利益を得ているサクラサイト被害に関して、被害者の男女比はほぼ同数で、30代以上が半数以上を占め、サイトへの登録も自分の知らないうちに登録されている人が3割から5割もおり、被害金額も数百万から1000万円を超えるものも少なくないこと。最近はサイト業者の逃げ足が早くなっており、弁護士が受任する前にサイトへアクセスして証拠を保全することが重要であることなど、今度富山県弁護士会でも実施されるサクラサイト110番にも関連する有益な情報を聞くことができました。

・会社更生手続中の武富士の役員に対する会社法429条1項による損害賠償請求の可能性に関して、利息制限法を超える高金利での貸付により会社が成長してきたことについては会社に対する任務懈怠はないとも思えるが、最終的には過払金返還請求の増大により会社を倒産させる結果となったことについてはやはり任務懈怠ということができるのではないかとして、肯定的に考えることも可能などといった意見が交わされていました。

・そのほか、民事再生中のアエルからNYメロンへの信託譲渡、さらにNCキャピタルへの債権譲渡があった事案での過払金請求で、後2社が過払金債務をアエルに押し付けるような主張をしたのに対して、裁判所がこの主張の一部を否定した判決が紹介されました。

・熊本の業者が行った年金担保貸付について、高裁段階で社会通念に照らして著しく違法との判断が示された事例が紹介されました。

・昨年の中弁連夏季研修でも講演された荒井哲朗弁護士による、執行のための工夫についての講演がありました。

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